図1 ロボットの外観 図2 脚の構成
まず始めに、MARI-1のハードウェア関連について説明します。
ロボットの外観を図1に示します。
MARI-1は各脚に6つの関節(6自由度)を持っています。
これによりロボットの足先は3次元空間内で任意の位置と姿勢を取ることができます。
ロボットの胴体や脚はMCナイロンと呼ばれる樹脂で作られており、
他の2足歩行ロボットに比べて非常に軽量にできています。
ロボットの全高は1.21[m]、全重は25[kg]となっています。
各関節のアクチュエータとして、
ハーモニックギア(100:1)付きのDCサーボモータを用いています。
各脚の構成を、左脚を例として図2に示します。
点線は各関節でのモータ回転軸を表しています。
各関節モータの出力は、表1のようになっています。
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図3 システム構成
ロボットの各脚に6つの座標系を設定し、それぞれを各関節に配置します。
基本座標系は、図4に示すように胴体に固定されたX0-Y0-Z0とします。
第1関節から第6関節までに配置された座標系をそれぞれ、
X0-Y0-Z0〜X6-Y6-Z6とします。
基本座標系X0-Y0-Z0から足先の座標系X6-Y6-Z6までの関係は、
座標変換により記述することができます。
足先の位置指令値は位置ベクトルXで、
また、足先の姿勢指令値は3×3姿勢行列Aで与えられます。
姿勢行列Aの列ベクトルはそれぞれ、足先の座標系X6-Y6-Z6の各軸が
基本座標系X0-Y0-Z0に対してどちらを向いているかを表しています。
これにより、ロボットの足先がどのように傾いているかを表します。
図4 ロボットに関する運動学
X、Y、Z方向での足先の軌道は図4、5、6のように
時間の関数として与えられます。
X方向では歩幅s[m]を、Y方向では胴体の横振りの振幅d[m]を、
Z方向では足を上げる高さh[m]をまず決定し、
各点間を様々な関数でつなぐことにより軌道を生成しています。
また、足先の姿勢の指令値に関しては、
足裏が常に地面と並行になるような指令値を与えています。
図5 X方向での足先の軌道例
図6 Y方向での足先の軌道例
図7 Z方向での足先の軌道例
各関節角度指令値は10[ms]ごとに生成しています。
全ての関節角度指令値を歩行プログラムに読み込み、
コンパイルした後、DSPにダウンロードします。
これにより、ロボットは与えられた関節角度指令値に従って歩行を開始します。
2足歩行は、大きく静歩行と動歩行に分けることができます。
静歩行は、力学的に安定な状態を保ったまま歩く歩行、
動歩行は、瞬間瞬間では力学的に不安定な状態ながら、
全体としては安定に歩くような歩行です。
静歩行に比べ、動歩行の方が歩行速度や消費エネルギーの面で優れています。
動歩行はさらに動歩行と動的歩行(準動歩行)に分けることができます。
ロボットの重心を地面に投影したものが、常に足裏の外にあるものが動歩行、
全周期ではないが、外にある瞬間が存在するものを動的歩行と呼びます。
現在MARI-1は動的歩行を行うことができます。
また人間の歩行速度は約4.0[km/h]と言われています。
現在MARI-1は、最高約1.0[km/h]で歩行することが可能です。。
今後は、
・腕を振ることによって垂直軸周りの回転を補償し、さらに高速な歩行
・消費エネルギーがより少ない歩行
・つま先関節を作り、蹴り動作を含む歩行
などの実現を目指しています。